液体ミルク解禁なるか?:災害時に備えて日本でも液体ミルクの製造を。

以前ハワイに行ったときの記事でも少し触れたが、皆さんは液体ミルクというものをご存知だろうか?
 
日本ではまだそこまで馴染みはないが、アメリカやヨーロッパでは一般的に使用されている、赤ちゃん用の「出来合いミルク」である。
 
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上の写真は、Similac社の液体ミルク。
新生児から使えるもので約60mlのボトルが8本入っており、使用時はフタを開けて付属の乳首をつけて飲ませるだけ。
 
温めたり、水やお湯を足す必要もないので外出先などでも重宝されている。
また常温で保存が可能なので、備蓄としての長期保管に向いている。
 
日本では「ミルクの適温は約40度」と言われているが、アメリカなどではミルクも常温の水で溶かすこともあり、少しミルク事情が異なる様子。
 
この液体ミルク、東日本大震災時にも海外から届けられ、被災した赤ちゃん達にも重宝されたという。
 
 

液体ミルクの必要性

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赤ちゃんを世話をしたことのある方なら想像がつくと思うが、粉ミルクの準備は結構手間がかかるもの。 

  1. 煮沸消毒した哺乳瓶を準備する
  2. お湯を用意し、調乳する
  3. 水でミルクを冷ます 
この3ステップをただでさえ物資の少ない被災地で実行するのはどれだけ大変だろうか?
 
さらに、もし震災で被災した赤ちゃんがミルクだけで育っていたら?
母乳があまり出ず、ミルクに頼らざるを得ない状況だったら…

十分な補給が出来ないと赤ちゃんはすぐお腹を空かせ泣き叫んでしまうし、それは容易に命にも直結する。
 
もし液体ミルクが日本市場にも流通していれば、この手間を全く必要とせず、すぐにミルクを与える事ができる。
 

日本では製造されていない

しかしこれだけ便利な商品であるにも関わらず、液体ミルクは製造・販売されていない。

2016/10/17追記

液体ミルク解禁に向けて、政府が検討を始めたとのこと!ようやくか。


製造・販売されない理由の一つとして、厚生労働省の定める「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に液体ミルクの記載が無いことがネックになっているようだ。
 
この省令は、いわゆる乳製品に関する成分規格や製造等の基準についての取り決めである。
例えば牛乳、バター、アイスクリームといった乳製品(省令上は乳等と呼ぶ)など製造の際に、こんな成分でないといけないとか、こんな方法で作らないといけないといった指示が書かれている。
 
で、この省令のなかに乳児向けの「液体ミルク」の記載が無いので今現在製造出来ないということ。
ちなみに輸入は現在amazonなどで個人輸入は可能。高いけど。
国や企業規模となるとこれも特別な認可が必要のようで、今のところ今回の熊本地震や東日本大震災のような緊急事態でない限り認可はおりていない。 

液体ミルクの必要性を呼びかける声も

こうなると当然液体ミルクの輸入・製造を日本でもすべきだと声があがる。
 
平成25年の国会厚生労働委員会で、子育て中でもある大沼みずほ議員がその必要性について述べている記録が残っていたので載せておく。

大沼みずほ君: 
液体ミルクというのは、衛生上もまたその手軽さからも震災時などには特に効果を発揮するだけでなく、仕事をする女性にとってもミルクの時間、作る時間の短縮にも結び付きますし、また育児に参加する男性にとっても便利なものであります。また、国連食糧農業機関、FAOでも、無菌状態の液体ミルクの方が粉ミルクよりも衛生的であるとして推奨しています。 災害が多い日本において、これからまた災害が起こることも予見されます。また、女性が今後社会で活躍していくためにも、育児時間の短縮という観点からも、この液体ミルクの製造や輸入につき、現在の厚生労働省のお考えをお聞かせいただければと思います。

 

大臣政務官(赤石清美君)
平成二十一年四月に社団法人日本乳業協会から、乳幼児のための調製液状乳の基準設定に関する要望がありました。しかしながら、液状ミルクの基準について検討を進めるに当たっては、開封後の細菌の繁殖等の衛生上の懸念もあることから、詳細なデータを踏まえた議論が必要と認識しております。

平成二十一年四月に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会において、開封後の細菌の繁殖といった衛生上の懸念があることから、基準設定に当たっては保存試験等の詳細なデータが必要との議論がなされております。このため、事業者における具体的な製品の開発状況や試験データ等を踏まえつつ、引き続き検討を進めてまいりたい。

結局は、まだまだニーズが非常に少ないため、メーカーもそこまで開発に踏み込めていないというのが現状でありまして、今後ともこれらについては世界の状況を見ながら後押ししていきたいというふうに考えております。(第185回国会 厚生労働委員会より)

大沼みずほ議員「液体ミルクの製造・輸入を進めて欲しい」

 大臣政務官「うん…でもメーカーも需要がそこまで見込めないのでやる気がしないみたいだよ。法改正するのもいろいろ面倒だしさ。」
 
というふうに聞こえるんだけど。私は。
 
今回の熊本地震においても、その他の女性議員が液体ミルクの輸入の話を進めているとも聞いた。やっぱり育児を経験している方々だからこそそのメリットを十分理解しているんだろうな…
 
 

ということで悪循環…

メーカーが開発に乗り出さなければ、大臣がいう「細菌の繁殖等の衛生上の懸念もあることから、詳細なデータ」も集めることが出来ない。
 
メーカーがよほどメリットを感じて動きださない限り日本での製造は難しいのが現実。
 
大量輸入もよっぽど緊急事態でないとダメ、製造も需要がよく分からないしメーカーは粉ミルクで満足してるので作る気ナシ…
 
これだけ震災で赤ちゃんとそのパパママを救った実績があるにも関わらず、国もメーカーも重い腰をあげてくれない。
 
 

一般消費者に出来ること


change.org

さて、では実際に必要としている私たち消費者に出来ることは何だろう?

 
Change.org」というサイトをご存知だろうか。
 
「変えたい」と思う気持ちを文章に載せて、それに賛同してくれる人々を集め、社会を動かすことを目的としたオンライン署名活動サイトである。
 
世界の約14億人の人々がこのサイトに寄せられた「変えたい」に何らかのアクションを起こし、現在196カ国17,416人の人々が署名活動により「変えられた」成果を残した。
 
そんななかで1人の日本人女性が起こしたアクション。それが、
お出かけや災害の時に赤ちゃんがすぐ飲める乳児用液体ミルクを、日本でも製造・販売してください!
 である。現在既に約27,000 42,000人以上の人々が賛同し、署名を済ませている。
 
一般消費者からニーズがあるということを証明できれば、メーカーも製造・開発に向けて動きがでるかもしれない。
さらにメーカーが製造にあたって衛生面での調査やデータを集めれば、省令に改正の動きもでるかもしれない…
 
そんな思いでこの署名運動を起こした女性、スエナガさんは直接内閣府や企業に赴き、この署名とともに消費者からのニーズがあることを今現在も熱心に伝えてくれている。
 
既に海外では長期保存の可能な時短商品として一般的であり、お湯などの事前準備が一切不要な液体ミルク。
地震の多い日本でこの商品が流通すれば、万一の災害時にも各家庭が備えておくことが出来き、多くの赤ちゃんを救うことが出来るはず。
 
液体ミルクの必要性を感じた方は、メーカーや国に動いてもらうためにもこの署名運動にご参加ください。