「赤ちゃんのママが本当の気持ちをしゃべったら?」という本を紹介したい

 
「お母さんたちのグループのなかに、耳がぴんと立っている男の子がいたんです。たいしたことではないでしょ。なのに、あるお母さんが「素敵なお耳ね」って言ったんです。男の子のお母さんは男の子に寄り添って、何度も何度も頭をなでていました。どれ程傷ついたいたことか。誰だって自分の子は世の中に受け入れてもらいたいものなのに。」(11ヶ月、男児)
 
お母さんは赤ちゃんが世に生まれたとたん、その子を社会の一員として周りから非難されないよう最善を尽くそうとする。
時にそれは母親の感受性を鋭くし、まわりからの何気ない一言で傷つくこともある。
 
赤ちゃん連れで外に出るようになると、色んな人に話しかけられるものだ。著者もよく出産を経験したであろう年配の女性から「靴下ははかせた方が良いんじゃない?」「こうやって保湿するといいよ」などとアドバイスを受ける場合がある。が、いつも歓迎できる訳ではない。
 
産まれた瞬間から我が子の人生を全て知っているお母さんは、どれだけその子の事を深く想っているだろうか。その想いは形とならず、目には見えない。だからそのような領域にずかずかとあがられるとお母さんはひどく動揺し、時に憤慨するものだ。
 
「今日はほんとうに落ち込んでしまった。一つはお天気のせいだけど、もう一つは、何もできなかったから。一日この子といて、「私の人生はどこにあるの?」って思っていました。(4ヶ月、男児)
「ただ一日が過ぎて、なりゆきで子供の世話をして。自分が何か特別なことをしているとは思えない」(4ヶ月、男児)
 
著者もまさに同じことを考えていた。一日中せわしなく動いているはずなのに、ふたを開けてみれば部屋は散らかしっぱなし、思い返しても「今日は何してたっけ?」といった始末である。
 
仕事であれば、「顧客と会議をした」「見積書を提出した」「メールを何件送った」等と目に見える成果が出るだろうし、そのような誰にでも分かる成果であれば、第三者も評価が出来る。
 
しかし育児はどうだろう。「今日はうまく寝かしつけができた」「吐かずにミルクを飲んでくれた」といった事を誰が評価し褒めてくれるだろうか。
 
育児書は世に山ほど溢れているが、まずその通りに育児が進むことはない。だからお母さん達は自分が最善と思うやり方で子を育てる。
 
正解とする基準が無いのだから、育児を評価するのは非常に難しいことだ。評価がされないということは、何かを成し遂げたという証明にもならない。
 
だから赤ちゃんをもつ多くのママ達は自分が日々こなしている事に価値を見出せず、また上手く言葉にもできないから「一日対した事をしていない」と思ってしまうのかもしれない。「たいしたことをしていないのに何故疲れているんだろう」と疑問さえ浮かべてしまう。
 
本当は予測も出来ないことに常に神経を尖らせ、ひとときも心が休まることのない大変な仕事をしているかもしれないのに。
 
 

◆本当は「お母さん」はすごい事をやっている!

私には、疲れ果てたようすのお母さんが見える。それでも、奇跡のように赤ちゃんを揺すりながら歌を歌うエネルギーは残っている。赤ちゃんが寝入ると、部屋は安らぎで満たされる。 何かすごい変化が起きたようだ。それは、悲観が静かな調和へと変わる旅だったのだ。
 
この本では、この本の筆者が赤ちゃんをもつお母さん達の言葉を聞き、女性が我が子と対面してから始まる強烈な心の変化と、それに対応しようとするお母さん達の苦難や葛藤を上手く言葉にしてくれている。
特に赤ちゃんを持つママには励みになると思うので、ぜひこの本を一度読んでみてほしい。
 
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